はじめまして。とっつぁん初と申します。
タイトルは一応仮題です。書きたいから書いちゃいましたぐらいの初心者です。
更新日時は不定期で、ちょっと厨二っぽいかも・・・
世界観はいたってシンプル。異世界で異能の力をつかい、友情・努力・勝利が根幹のお話です。
感想、批評はメール、スレでお願いします。一言(つまらない、面白いなど)でもいいのでくれるととても嬉しいです。
作品中では多々改行している部分がありますが、そこは作品をより読みやすくしたものであることをご了承ください。
では、ファンタジーの世界にようこそ!
とっつぁん初
No.10682890
2011年02月04日 21:01:23投稿
引用
プロローグ
☆
小さな部屋の中、光源が一つしかない窓から射す日の光だけで薄暗い。そこにあるのは全て木材で出来た家具で机に椅子、ベッドに本棚、ポールハンガーである。そんな部屋にいるのは外套を羽織った一人の青年だけ。その容姿はこの薄暗い部屋ではシルエットになっていて分からない。
一つしかない窓から射す日の光が使い古された机を照らしている。その上には閉じた本が置いてあり、その本に青年は短く何かを書きこんでいく。
それを手に持ちゆっくりと本棚のほうに歩いていき目の前でとまり、青年は本を持っていない右手を本棚にかざす。その本棚には同じ本がびっちり置かれていて、右手首には銀の十字架をチェーンで繋いだブレスレットがわずかに光を帯びて揺れている。
その右手を空を切るように振りはらう。すると本棚がプシュと空気の抜けるような音がして自動ドアのように開き始めた。その先には真っ白な部屋が広がっていた。
ドアが完全に開いてから青年は真っ白な部屋に入る。そこはさっきの部屋よりも格段に明るく、天井のない真っ白な円錐状の空間だった。青年がもう一歩進んだのと同時に真っ白な壁からさっきの部屋にあった本棚が無数にでてきた。
青年はそのまま目の前にある本棚までいき止まると、本棚の壁が上下左右に動きだしやがて止まる。その目の前の本棚に持っていた本を置くとまた本棚が少しだけ移動した。
目の前にきた本棚から一冊の本をとって1ページ目を開く。そして何かを懐かしむように
「すべて、ここから始まったんだ・・・」
そういって顔を上げる。その瞳には何か強い意志が宿っているようだった。
☆
とっつぁん初
No.10684033
2011年02月05日 02:09:14投稿
引用
☆
キーンコーンカーンコーン・・・・・・
五時限目の終了を知らせるチャイムが鳴る。都心に割と近くにある高校からそれは響いてくる。
その学校の2階の教室、窓側の席に座る少年━━工藤真(まこと)は校門のすぐ中に立っている大木、プラタナスをぼんやりと眺める。
今は秋で、枯れて葉が落ち余計な枝は切り落とされている。春になれば、その枝に新緑の葉をまとわせて明るく新入生を迎えてくれる。
だが今はそんな面影もなく、降っている雨が余計にみすぼらしく見せている。だがそんな枝になぜか鷹がとまっている。
そんな光景を眺めていた真は
「へぇ、あんな鳥こんなとこにいるんだ。」
とそんなことを呟いていた。すると鷹もこちらに気付いてジッと見てきたが、しばらくすると校門の方に行ってしまった。
何処に行ったか目で追おうとしたが、友人の陽気な呼びかけによって難なく遮られてしまう。
「おーい、真っ!帰ろうぜ。今日は雨だし部活もないだろ。・・・ん、なんだ外に不死鳥でもいるのか?」
相変わらずの調子で話しかけてくる友人に、呆れたように
「分かったよ、帰るからそんなに顔を近づけるなジニー。」
友人、ジニーは満足そうに頷いて、校門の前で待ってるぞ。と言って教室から出て行った。
ジニーは日本とイタリアのハーフで、真とは小学校からの付き合いだ。金髪と茶目が似合っている。対して真は普通の高校生で、特に目立ったところはない。勉強もスポーツも大体出来る普通の人間だ。
強いて言えば、何にでも興味を持つ。まぁ二人とも好奇心が強い、そういう点で気が合っているのかもしれない。ちなみに部活はジニーはサッカー部、真はテニス部である。
その帰り道、二人はずっと喋っていた。最初は「あいつが━━」とか「部活は━━」みたいな感じの話だった。だが急に「もし、人には使えない能力があったらどうする?」という話題になった。(もちろん、ジニーが言ったことである。)
その質問の答えに真は少し考えた後、まぁ使わないだろ。と答えた。
それはそういうものが嫌いというわけではなく、単に「世界征服」のような欲がないのだ。真はそれだけじゃ物足りないと思い、でもと付け加えた。
「でも俺以外にいたら分からねぇな。チーム組んで世界も取れるだろうし、沢山いればその中で最強とは呼ばれたいね。」
それくらいの野心はある。どうだ、と聞かんばかりにジニーの顔を覗く。
だがジニーは黙りこんでしまっていた。真は「はずしたか?」と思って
「悪い、真面目に答えたつもりだったんだが…。」
と言うよりも先にジニーが少し暗い口調で言った
「じゃあもし、そんな能力を俺が持っていたら?」
「えっ」と、一瞬真は戸惑うがすぐに返事をする。
「変わらないよ。お前がその力で何しようと、俺はお前の友達だろう?」
言ったあとに後悔した。はずかし〜言わなきゃよかった・・・。ジニーの反応を見る余裕もなく、ただうつむいてしまった。
そのジニーは真の言葉を聞いて安心したように表情を崩して、少し笑って真には聞こえない声で
「ありがとう」と言った。
そう言ったあとジニーはいつも通りの明るい声で
「今日はこの辺で帰るわ、また明日!じゃあなー」
語尾を景気良くのばし手をブンブン振って走り去っていく。
真は苦笑しながら顔をあげ短く返事をして帰路につく。
家について、真はジニーの言ったことが気になって少し考えたがやめた。アイツは漫画の読み過ぎだよ自分がこんなことを考えるのもバカバカしい。そう思っていた。
次の日、真は朝から落ち着かなかった。それはHRの時間になってもジニーが来ないからだった。いつもなら自分と同じか少し早く来て友人と喋っているのに。
心配だった、昨日の言葉が頭をよぎる。
出席を取り終えるぐらいのところで教室後方のドアが開いた。ジニーだ。
良かったと思ったが、すぐに先生と同じ質問をしてしまう。
「どうしたの、その怪我」
まさに満身創痍と言ってもいいようなぐらい怪我をしてた。顔や手には擦り傷や痣《あざ》がありガーゼを貼っている。痛々しい。
もしかしたら制服で隠れている足や腕にもあるかもしれない。何したんだよ!と心の中で呆れる
その質問にジニーは一言、陽気な声で
「階段から落ちました」
一瞬の間を置き笑いが起こる。真もつい笑ってしまった。
「なんだいつもどおりじゃないか」と安心した。
そのあともう一度怪我のことを聞いてみた。そしたら
「なんだぁお前、ネタだと思ったのか。いや本当だからな。」
と苦笑された。本当だったらしい。あの痣は階段で落ちたとき、擦り傷はサッカーの練習でつくったものらしい。一体どんな無茶をしたのか想像できない。
それから授業も終わりジニーと帰ろうと思ったが、どうやら先に帰ってしまったらしい。いつもなら一言かけてくれるのにと思うとちょっと寂しくなった。しょうがない一人で帰るかとさびしくトテトテ歩いていく。
少し歩いて話し相手が居ないのはつまらないなぁと思ったので妄想にふけってみる。昨日ジニーが言った能力が手に入った自分を主人公に・・・。
想像してみると意外と面白いもので気が付いたらだいぶ家の近くまで来ている。ここはその家の近くの公園のそばにある高架下だ。
そこのちょうど真ん中あたりに壁に寄り掛かっている男がいた。真がその男に気付くと同時に、明るい声音で男は言った。
「やあ、君を待っていたんだ。」
☆
とっつぁん初
No.10694272
2011年02月08日 22:43:30投稿
引用
予想にしなてなかったことが起こると簡単なことでも頭は混乱して理解するのが遅れる。「待っていた」そんなこと・・・理解してるし混乱もしていない。ただなぜか身体が震えていやな汗が滲んでいて、目の前の現実から目をそらすことを許さない好奇心に溢れた自分がいる。
「人違いですよ。でもこれ以上関わるなら警察呼びますよ」
冷静を装ったつもりだったが、どうしても声が震えてしまう。身体が、頭が拒絶する。「言いたいのはこんなことじゃない」と。
「いや君だよ、工藤 真君。君を待っていたんだ・・・それにこの世界の人間じゃ私をどうすることもできないよ」
諭すように静かに、ただはっきりとそう言った。俺を待っていたと。その男は言い終えたときには真の目の前まできていた。
その容姿はマントを羽織っており中に黒い服を着ていて、何枚も重ね着をしているのかえらく大柄にみえる。身長も真より頭2つ分大きい。その体躯のせいで所々に施してあるアクセサリーが小さく見えてしまっている。顔立ちは優しそうなおじさんといった感じで、茶髪の短髪で軽いオールバック風だ。顎には整えられた髭がもみあげまで繋がっていて、これも茶色である。
相手の全容を確認し、あらためて聞いてみようとするよりも男が先に口火を切った。
最近は言いたいことを常々遮られてる気がしてならないと真は心の中で憤慨していた。だが次に見る光景がそんなことも忘れてさせる。
「あっちの公園を見てごらん」
そう言われ高架下から覗くように公園に目をやる。するとそこにはジニーがいた。いつもはこんなところにいないのに。とそんなことは頭の中の考えが消え去るようなことじゃない。つい言葉に出してしまう。
「なんだよ、あれ・・・」
そう公園には遊具がある。その遊具のほとんどが凍りついていた。たしかに今は冬だが遊具が凍るほどじゃない。しかもその中に化け物がいた。巨大なゴリラのようなモンスターが・・・遠くからなのでそれ位しかわからないが確実なのはジニーとそいつが戦っているようだった。
「世界中の若者たちに異能の力を与え戦い、その頂点にたった者には望みをひとつ叶えよう。それを君にしてもらいたいのだよ」
頭が追いつかない、嘘かも知れない。でも目の前のことは・・・。そこで真は目の前の男につかみかかる。
「最近ジニーの様子が変なのも、怪我が多いのも全部てめぇのせいか!!!!」
怒りにまかせて叫ぶ。そうした瞬間なにかの力で吹き飛ばされて背中を強く打ってしまった。真がせき込んでいる間にも男は話し始める。
「君があの子を助けたいなら、君がこのゲームに参加してあの子をすぐに失格させればいいんだ。あの子の望みは君が叶えればいいじゃないか」
真はそれを冷静に聞いていた。理解していた。そして聞こうとしていたことを聞いてみる。その眼には怒りを残したまま・・・。
「あんたは一体何者なんだ・・・?」
かえってきたのは想像を飛び越えたものだった。
「・・・私は《神》だ。君を━━━」
☆
とっつぁん初
No.10699105
2011年02月11日 04:48:25投稿
引用
あの後の言葉はタイミング良く電車が上を通り過ぎたため、聞き取れなかった。
真は今ベッドの上で寝ている。毛布も掛けず、ただ仰向けになって右手を天井に伸ばしていた。変わっていることと言えばその右手には鞘に収まった日本刀があることぐらいだ。
なぜこんなことになっているのか、それは真が《ゲーム》に参加したからだ。あいつによれば参加者一人一人に特異な能力と武器が与えられているらしい。それで真は日本刀が武器らしい、これでも十分戦えそうだが素人の人間には扱えるものじゃない。
(あいつが言ってた「能力」をはやく見つけないとな、ってかなんで教えてくれないんだよ。わかんねぇよ、あークソ!)
そんな悪態を口にはださない。真夜中ってのもあるが、知らない人間に聞かれればイタイやつだと思われる。そんなことを思っていたら、いつの間にか寝ていたようだった。
翌日、今日は土曜日だ午前中は部活で午後は疲れた身体を休める、というシンプルなスケジュールだったのだが真は帰ってくるなり自分なりの修行に入る。
高1男子にとって刀を持つというのはかなり心が燻(くす)ぶるものだ。しかし重量もそれなりにあって、思うようになかなかいかない。
「はぁこれはあんまり戦闘では期待できないな。ちょっと自分の能力でも探ってみるかな」
そう言って刀を鞘に納める。そのときに聴ける音は音楽のように真は美しく感じた。
先日見た限りではジニーの能力は「氷」らしい。ということで自分は「火」か、とありきたりな考えを実行してみたもののライターやマッチを使っても火を自由自在に操ることは叶わなかった。
「はぁ本当、俺の能力ってなによ・・・」
空に向かって問いかけてみたところで何も分かりはしないのだが。それでも今の自分になにができるのか早く知りたくて。
(家で考えてばかりじゃ駄目だな、外に出たほうが色んなアイデアもでるしな)
そんなことを思いながら肌寒い中を厚手のコートを着て商店街を歩く。昼間の商店街は歩行者天国でいつもより人が多い。
(このなかには俺みたいに《ゲーム》に参加してるやつはいるんだろうか)
ふとそんなことを思って歩道のガードレールに寄り掛かってみる。すると掛けた手のひらからバチッという音がした。
頭にハテナマークを浮かべて恐る恐る自分の手をみてみる。そこには青白い電流がかすかにほとばしった手があった。ガードレールから離して手を凝視してみても、変わらず電気を帯びた手でしかない。
「これが俺の能力・・・か・・・?」
そういった真の顔は自然とほころんでいた。
☆
とっつぁん初
No.10738850
2011年02月23日 18:11:52投稿
引用
男はその一部始終を眺めていた。と、いってもその男が立っている場所は高層マンションの屋上の金網フェンスの上だ。その男━━《神》は観ていたことに対して笑みを浮かべ言う
「さぁ早速はじめるとしよう、運命のゲームを・・・」
右手をある少年にかざし、その手につくりだした小さな光の塊を少年に向かって放った。
その少年はどうしようもないくらい気持ちが高ぶっていた、この数日間なにを信じていいのか分からなかった。"これは夢なのかも"ってそう思っていたが確信した。
"自分は他人とはちがう"と、右手のひらで小さな雷をもてあそびながら抑えきれず頬が緩む。嬉しかった。なんとなくそんなことしか思っていなかった。
ゴォォン。大きな鉛玉を落としたような音が突然響く。埃が舞って砕けたコンクリートが散らばっている。場所は真から5メートルほど離れた車道の真ん中だった。車道といっても歩行者天国の最中なので車は通っていない。
そんなことを冷静に考えられるのは先の高揚感のおかげだろう。だがそんな人間は周りには一人もいない。一人の悲鳴を皮切りに「よーい、ドン」の掛け声でもあったかのように一斉に走り出す。
どたどたと真の横をさまざまな人が駆けていく。だが急にその足音も人も消えた。さっきの喧騒とは真逆の静寂が辺りを包む。そこにいるのは真と落ちてきた何かだけだ。真は落ちてきたそれに視線を移し、埃が晴れてきた先にそこにいるものを見る。
そこにいたのは巨大な熊のようだった。全身は赤毛で覆われ、鋭い爪が不気味な光を放っている。しかし一番異様だったのが背中にハリネズミのように生えている無数の棘だ。熊は四つん這いの恰好のまま真を見る。獲物を見るように。そこで真は理解する。
(これはこちらの生物じゃない。つうことはアイツのいうゲームの障害物ってところか)
神と名乗る男、公園で化け物と戦っていた友達の二つを思い浮かべ、あらためて目の前のものを敵と認識し拳を強く握る。
(今は刀は家にある。だから武器はこの雷だけってわけか)
今一度拳の上で雷を確認してから
「やってやろうじゃねぇか!」
挑発をかねて自分を奮い立たせるつもりで言い放つ。熊の方もそれを挑発と受けとったようで、二本足で立ち前足をめいっぱいに広げて咆哮する。立ち上がると壁が現れたと思うほど熊は大きかった。
真は思わず片足を引いてしまっていた。熊はそれを見逃さず突っ込んでくる。時速50キロ超えてるかと思うほど速く、地面を蹴るたびに爪がコンクリをえぐりだし背中の無数の針をガチャガチャと響かせている。
真はとっさに飛びのいて避けた。熊は真のすぐ後ろにあった歩道のガードレールに激突していた。無残にも熊の突進を受けたガードレールは歪にひしゃげていた。それを見た真は背筋にゾッと悪寒が走ったのを感じた。
熊は痛かったのか前足で頭をかいている。だがすぐに真に向き直り警戒しながらもじりじりと距離を詰めてくる。真も下がっているのだが相手の大きさの為すぐに1メートルぐらいしか距離がないと気づいた時には熊が立ち上がり前足を振り上げている。
ダン!という音と同時に地面が割れる。真は次々と繰り出される攻撃を紙一重でかわしていく(といっても届かない範囲まで全力で逃げているだけなのだが)攻撃が当たらにことに憤りを感じた熊は突進をしてきたがまたしてもガードレールにぶつかった。
それを見て真は熊に背を向けて全力で距離をとった。そこから反撃に出るために。
「今度はこっちの番だ」
そういって直線的な軌道の雷撃を身振り手振りで放つ。が当たらない。途中で失速してしまったり、軌道がそれたり、うまく敵の方にいかない。
熊の方は安全だと思ったらしく、ゆっくりと近づいてくる。そこで真は無駄撃ちをやめ、一発に集中する。狙いを付けやすいように手をピストルの形にする。
(相手をみて、無駄なことを考えず、イメージする)
今までのより早く巨大なその一撃は熊の顔面に直撃した。巨大な熊を2メートルほど吹き飛ばす。さすがに驚いたのか後ずさっている。もう一撃と構えたとき熊は前かがみになって背の針の先端がすべてこちらに向いている。まずいと思った時には遅く射出された巨大な針が地面に降ってきた。
ズドドドド。と砂埃を巻き上げて地面に針が突き刺さる。真はその針に囲まれている状態だった。自分の真上に雷撃を放って自分が貫かれないように防いだのだ。しかしそこに突進してくる巨大な熊の姿があった。
☆
とっつぁん初
No.11154579
2011年08月01日 16:04:09投稿
引用
重い衝撃が身体に走る。そのままノーバウンドで数メートル吹き飛ばされ後ろにあった壁に鈍い音を立てて激突した。
肺の空気が一気に抜ける。口には酸っぱいものが込み上げてくる。
痛い。全身は筋肉が委縮してしまっているのか思うように動かない。うなだれた顔を上げて正面を見る。
そこには赤い毛でおおわれ背中には1メートルほどの針がびっしりついている巨大熊がいる。変わっていることがあれば顔の毛は焦げていて、左の目から耳、肩にかけて肉が少し抉れて血が滴っていることだ。
それは真が突進を受ける直前に放った雷によるものだった。いくらコントロールがなくても的が大きければ1メートル弱の距離からなら外すことはない。
「つっても、捨て身の攻撃なんだけどな・・・」
自嘲気味に笑い、相手に教えるように呟く。それに激昂したのか大きく咆哮する巨大熊。だが怒りに任せて突っ込んでくることはなかった。先の攻撃を警戒しているのか5メートルほど離れた位置から様子をうかがっている。
敵が攻撃してこないと分かっても突っ込んでこないのは視力が半分無くなっていることもあるのだろう。だが向こうが攻撃しないというわけではない。あの巨大熊の背には1メートルほどの針を敵に向かって無数に飛ばせるのだ。
「くそ」
焦りのせいか表情も硬くなる。それを感じ取ったのか巨大熊はより真にプレッシャーを与えるかのように1メートルほど近づく。これで死ぬ確率も跳ね上がったわけだ。
真はあまり力が入らずうなだれた右手を見て思う。
(こっちが放てるのはあと一撃。それで決めなきゃこっちがやられる)