〜前書き〜
個人の趣味で書く小説です。
クオリティーの低さ、ただならぬ遅筆が予想されます。その時は問答無用で切り捨ててくださって結構です。どうぞこんなスレッドはお忘れください。
尚、作者自身のモンハンの知識は2ndGと3rd、ハンター大全Gのみとなっております。内容はそれらからとなりますのでご容赦ください。
2011/01/28 追記
作者に何かありましたら、お手数ですがメッセージボックスにてお願いします。誤字脱字やその他の指摘、感想などもありましたらこちらでお願いします。
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九郎助::mixi
No.10627554
2011年01月13日 22:32:32投稿
引用
突き抜けるような青空と、どこまでも沈んでゆくような碧い水面の重なるところ。そこが一番この密林の美しい所だといつも思う。
密林<エリア4>。俺は今日、一人の同行者と共にこの場所に来ていた。今はターゲットのモンスターを待ち伏せる為にこの場所に留まっていた。
ターゲットであるモンスター——イャンガルルガを見失って、半刻(1時間)ほど。ペイントボールの効果が切れたのに気づかずに飛び立たせてしまった。大きく弧を描いて離れていくそれを見て、すぐ再発見できると思っていたあのときの自分を少しだけ呪いたくなる。
そしてその後、同行者の助言を受け入れる形で、今ここにいる。
ちらり、と首を右にひねる。そこには今回の同行者——カレンと名乗るハンターがいた。
性別は女。そして彼女を一言で表すなら、というよりむしろ、彼女は一言で表すことが出来る、といったほうがいいかもしれない。
彼女は正に、『ガルルガ』だっだ。
もちろん彼女がイャンガルルガであるわけではない。彼女がまとう装備が、全てガルルガなのだ。
装備を同じモンスターのものでそろえるハンターは珍しくない。むしろ多いくらいである。そちらのほうが、スキルを発動させやすいためだ。
だが彼女はそれに加え、頭を〔ガルルガフェイク〕という、よりガルルガの頭部を模した装備で覆い、さらに背中に背負う双剣までが、イャンガルルガの素材で作られた〔テッセン【狼】〕なのだ。まさにガルルガ。さっきから、思わず目が行ってしまう。
「……七回」
「へ?」
いきなりガルルガの彼女が話しかけてきた。というかめんどくさいな、『ガルルガの君』とかって呼んでみようか。
「君がこっちをちら見する回数。さっきので七回目」
「あー、えっと……」
「そんなに珍しいかな? 僕の装備」
はいその通りです。などとはとても言えないので黙ってうなずく。あ、肯定しちゃった。しかも『やっちゃった』っていうのが顔に出た。どうしよう。
「ああ、別に気にしなくてもいいよ。僕にとっては、むしろほめ言葉だしね」
「あ、そうなの」
「僕はガルルガを愛しているからね。『ガルルガのようだ』というのは僕にとっては最上の褒め言葉さ」
ガルルガのようだまでは言っていない————が、心の中で思っていたのは事実なので肯定しておくことにした。
「そんなにガルルガが好きなの?」
「とりあえず、それ以上に愛しいと思えるものがないほどにはね」
——変態といわれても構わないよ、彼女への愛は変わらないから。
何度もそう言われ続けたのだろう彼女の言葉には、非常に強い信念を感じられた。彼女のように狩りに大して偏執的な趣味を見せる者は多くはない。しかしそういう者に限って、何者にも曲げられない不屈の信念を持っていることが多い。
そして自分も、彼女と似たような性質を持っている。といっても、彼女のようにモンスターに偏執するわけではない。自分の場合は、むしろ、人だ。
「っと、おしゃべりはここまでみたいだね」
そういう彼女を見遣ると、彼女はガルルガフェイクの内側から空を見上げていた。耳を澄ませれば、小さく、ばさり、ばさりという羽ばたきの音が聞こえた。
彼女はもう背の武器に手を掛けている。そして自分も、背中の大剣に手を掛けた。
九郎助::mixi
No.10629492
2011年01月14日 22:33:05投稿
引用
彼女を待ち伏せよう——。そう言ったのは、今回の狩りの同行者で、カレンというハンター(女)だ。
モンスターというのは一定のルートをぐるぐると周回する性質を持つものが多い。自らの縄張りを見回るためだ。
そして、その性質を利用し、あらかじめ彼女——イャンガルルガが来るであろうエリアに待ち伏せようというのがカレンの提案だった。
「というかね、彼女は、縄張りを見回っているわけではないと思うんだ」
「え? どういうこと?」
「彼女の異名は『一匹狼』……。それは彼女が非常に好戦的で、常に単独で行動していることに由来している」
「はぁ……」
それが一体何なのだろう。というか、なぜこんな話をするの——。
「ほんとに君はよく顔に出るね。何でそんな話を、って顔をしているよ」
……。
「まぁ、暇つぶしだと思って聞いてくれ。で、彼女は戦う敵を求めて、いろいろなところを飛び回る。つまり、彼女に縄張りなんて存在しないんだ」
なるほど、確かにいわれてみればその通りだ。じゃあイャンガルルガがエリアを周回するのは……。
「彼女は求めているんだよ、自らの、好敵手(ライバル)をね。彼女が立ち止まらないエリアがあるのは、そこには自分にふさわしい相手がいないと知っているからだろう。
——僕たちは、どっちなんだろうね」
果たして彼女にふさわしい好敵手であるのか、それとも、ただの捕食対象でしかないのか————。
そんなの、一生わかんないんじゃないかと、呆然と思った。
なぜなら俺は、イャンガルルガではないのだから。
ああ、きょうも、空は青い。
***
降り立つイャンガルルガをにらみつけながら、先ほどのやり取りを思い出す。
舞い上がる砂煙の中の目、殺気に満ちたそれを見ながら、少なくとも、敵として見られていることを認識する。
イャンガルルガ——イャンクックの突然変異種とも言われるが、その強さは比べ物にならない。
シルエットこそはイャンクックのものと似ているが、その甲殻はとげとげしく尖り、硬化している。くちばしや、大きな耳もその例にもれない。それに加え、もはや黒といっても遜色のない程濃い紫色の体色。それらすべてが、鳥竜種最強であることを証明している。
先ほどの戦いで耳ははじけ、くちばしにはひびが入っているが、その風格は、ほんの少しも衰えない。
「ギョワァァァァァ!!!」
やつが吼える。
地面を蹴り、こちらに向かって疾走してくる。
肌にびりびりと伝わる重圧。それを感じ取りながら、そのまま力に変え、大剣へと注ぎ込む。
狙うは、頭。
突っ込んでくるイャンガルルガに対して、タイミングを合わせて、まっすぐに——。
その剣を、叩き下ろした。
九郎助::mixi
No.10663431
2011年01月28日 22:27:13投稿
引用
ミシリ、という感覚。
そしてパキリ、という音。
最後に、衝撃が砂へと吸収されて。
やつの頭を、叩き割る。
「グギョワァァッ!!」
ガルルガがたまらず悲鳴を上げる。だがそんな事を気にする余裕はない。自分は人間、相手はモンスター。両者は敵同士でしかなく、同情の余地など存在しない。
だが、その関係性の中に別の何かを見出すことが出来るのは、全ての人間の特性なのか、それとも特殊な一部の人間の特異的な行動なのか。
少なくも、目の前の彼女は、その『別の何か』を見出しているのだろう。
彼女は、このガルルガを愛している。
愛した上で、殺しあっている。
彼女は今、ガルルガの足元にもぐりこみ、鋭い斬撃を繰り出し続けている。
右の刀で薙ぎ、左の刀で突き、回転しながら切りつける。
それはまるで、愛し合うもの同士の舞踊のようにも見える。
ガルルガフェイクの下、今は見えないその素顔は、間違いなく、嬉々として歪んでいるのだろう。
その時、目の前のガルルガの巨体がぐらりと揺れた。
ひざをかくりと折り、横に崩れ去る。
倒したわけではない——先ほどから足に集中していたカレンの攻撃に、耐えられなくなり倒れたのだ。まだ、生きている。
カレンはすでに追撃を始めており、まだ切れていなかった尻尾に、乱舞を叩き込んでいる。
双剣の最大の武器、[鬼人化]。己の全てを攻撃へとつぎ込み、渾身の連続攻撃を叩き込む。ただ、攻撃以外のことにおろそかになる為、使う場面を見極めなければならない——。
今が、その場面、好機である。
そして、自分にとっての好機でもある。
溜め切り。大剣の攻撃力は、そのほとんどが剣自体の重量から来るものだ。溜め切りは、そこに自分自身の膂力(りょりょく)を加える。
結果、時間はかかるが、通常の何倍もの威力を繰り出すことが出来る。
狙うは、頭。
乗せるは、心。
そんな言葉が、頭をよぎる。
心を乗せた剣は、モンスターと分かり合うことが出来ると、あの人は言っていた。
けれど、その意味が。
いまだに自分には、分からない。