白蜘蛛 2011年02月16日 10:30:07投稿
雑談
レス:3
白蜘蛛 No.10717396 2011年02月16日 10:33:34投稿
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白蜘蛛 No.10717418 2011年02月16日 11:32:09投稿
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白蜘蛛
No.10717396
2011年02月16日 10:33:34投稿
引用
視界全てが揺れている。
波打つ炎が辺り一面に広がっているようである。
建物は全て焼け焦げ、色彩の無いモノクロ映画のようである。
身体は熱さを感じていない。
聞こえるのは燃え上がる炎の音だけ。
ぼやける視界には、真っ直ぐと地平線まで続く大通りが映る。
赤々とした空には雲一つ無い。
大通りの中央、自分の正面に人影が立っている。
霞んで顔が見えない。
だがそれが誰なのかは分かっている。
しかし何故だろう。
今見るその人影は、別の人物に見えてしまう。
憎くて、恨めしくて、それなのに大好きだった“あいつ”に見えてしまう。
人影が自分に向かって口を開いているようだが、何を言っているのか聞き取れない。
まるで感覚がない……これは夢なのだろうか?
どうしてこうなったか思い出せない……これは夢なのだろうか?
いや、紛れもない現実だ。
傍に転がった銀のアクセサリーが、自分が今の状況に至った経緯を思い出させた。
今こうなっているのは、全て己の招いた結果だ。
全て夢なら、どれほど良かっただろうか……
白蜘蛛
No.10717418
2011年02月16日 11:32:09投稿
引用
数百年の歴史を誇る彩城(さいじょう)家は、代々城主に仕え、裏から政(まつりごと)を操っていた。
武士の家系でも無いのになぜそのようなことができたのか……それは、血筋を引く者は皆怪奇な力を持っていたためである。
その力とは、『炎を自在に生み出す力』……当時は妖術師として畏れられ、城主さえも歯向かうことはできなかった。
しかし代を重ねるに連れ、徐々にその能力は衰退していく。
力の衰えによって、次第に彩城家と城主との立場は逆転し、挙げ句には雑用として働かされるまでになった。
やがて時代は変わり、武士社会は終幕を迎え、王が統治し政治家が国を動かすようになる。
もともと知徳の優れていた彩城家にとっては、政治家に就くことなど容易かった。
異能の力は使われなくなり、せいぜい火花を散らせられる程度にまで弱まった。
しかし、その流れを打ち破る子が生まれた。
十字から噴き出させることのできる彼の炎の勢いは、天井知らずだった。
それを見た一族の老輩は、円から炎を生み出した初代の生まれ変わりだ、とその子を崇めた。
その子は初代彩城の名前「焦陰(しょういん)」と「国を良い方向へと焚き付ける」という意を込め、「焦焚(しょうた)」と名付けられた。
だが今の時世に特異な能力を持つ人間は忌み嫌われるだけ……力は彼自身を苦しめるだけのもの……両親はそう判断し、幼い焦焚に、その力を決して外では使わないよう言い聞かせた。
焦焚は素直にそれに従い、何事もなく幼少期を送った。
ここまでは何もかも順調だったのだ……ここまでは…………